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スズラン

  • 執筆者の写真: hntn
    hntn
  • 2018年2月24日
  • 読了時間: 3分

目を覚まして まず上半身を起こしてみた 私の目の前には綺麗に仰向けで眠っている我が主 顔は見えない、けどその赤い浴衣は間違いなく貴方のものでしょう 視界が辺りに慣れてきたのか、周りには青々とした鈴蘭が所狭しと生えていた 貴方の顔は鈴蘭が邪魔をして未だ見えない 私は身体を動かしたが、その瞬間に意識がはっきりした。 私は夢を見ていた。 ちょっと後悔が滲む。 「(もう少し見ていたかった)」 ここ何回か同じ夢を見ているのに、さっきよりも先に進まないのが定番になってきている。 何故よりにもよって"あの人"の夢ばかり見るのだろうか。 非常にむなしくなってくるじゃないか…。 「フィンランドに行って欲しいんだ」 また頭痛が増した。 「ごっごめんね京弥ぁ~ホントは僕も京弥と一緒にフィンランドに行って一緒にオーロラ見て一緒の部屋に泊まって一緒のお布団で暖を取りたかったんだけど~…」 そう言葉を止めて、斎は横にいた瑠璃に顔を向けた。瑠璃は険しい顔をしていた。 「フィンランドには今行方が分からなくなっているイギリス貴族の次女が逃亡してるらしい、たぶん単なる家出だ。彼女を連れ戻す為には女の方がいいだろうし、お前しかいなかったんだ」 「…奏ちゃんはどうなのよ」 「奏は休養中だ、まだ鼓膜が完全に治りきっていない」 彼女は一週間前の敵対ファミリーの襲撃に対応したがために、能力者にやられたばかりだった。 「…わかったわ、引き受けましょう、仕事だもの」 「すまないな、これは餞別(せんべつ)だ」 そう言うと瑠璃は分厚いコートのポケットから文庫本を取り出した。それは文庫本ではなく。 「"すぐに使えるフィンランド語"…?」 「それ、読んどけ」 「あらありがとう」 これを瑠璃が書店に行って買ったと思うと可笑しくて笑いが漏れそうになったが…、絶対に部下に行かせたか、NEXに行かせたかだと思った。 「京弥…キツくなったら帰ってきてもいいんだよ?もしくは呼んでね!すぐ行くから!」 「お前は自分の仕事の多さをまだ自覚してないようだな…」 「へっ…が、がんばります…」 「貴方みたいなへっぽこに助けらるほどヤワじゃないわよ」 「ガーン…!!きょうやぁ~…」 「じゃ、失礼します」 へっぽこの泣きっ面を横目で見ながら、私はボスの部屋を後にした。 「…相当寒いわよね…」 今は10月でイタリアのここも木枯らしが吹いてきた、さらに北上したフィンランドはマフラーや手袋もいるだろう。 そう考えながら吹き抜けの廊下に出たら、庭で飛沫とNEXが枯葉を囲んでいた。 「何をやっているの、二人とも」 「あっ!京弥さん!京弥さんも一緒に焼き芋食べませんか?」 「あら、風流ね」 「フーリューって何…」 「んー…その季節らしいことをすること!」 「ちょっと違うわね、落ち着いた、優雅で趣あることを指すのよ」 「「???」」 日本語に苦労したNEXと筋肉で出来たような飛沫には少々難しかったらしい。 「ふふっ、私はいらないわ。これからフィンランドに行く準備をしなきゃいけないから」 「えっ!?京弥さんフィンランドに行くんですか!?って…フィンランドってどこ?」 「ばっかかお前!!イタリアより北の国だよ!今の季節じゃ寒すぎなんじゃねーの?」 「そうね、貴方、極寒地で必要なものって何か教えてくれない?」 「えー…そうだな…さっさと慣れることだな」 「それアドバイスになってないんじゃない?」 「うっせーな!飛沫!フツーの人間の身体なんて知るか!」 「ははっ!寒いとこだろー?身体を動かせば自然と暖かくなるよ!」 「お前だって変わんねーじゃねーか!この男女!」 「アハハーっ」 この二人に聞いたのが間違いだったのかもしれない。 必需品は自分で考えるとして私は二人に別れを告げた。

131011 続く? 記憶に苦しめられる京弥さん それは果たして記憶なのだろうか たった一人だけで歩いていくのです 実際のイタリアの10月は知りません…


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