飛沫
ーーー目の前が澄んだ瑠璃色に溢れていた。 それは純粋という言葉がお似合いで、本質は残酷に塗れていた。 「おやおや、貴女はこんなところでおわる人間ではないでしょう?…いや…"人間"という形象は貴女には相応しくない、貴女は美しき"怪物"だ、その穢れなき本性を私に見せなさい」...
連れて帰る
「やめてください!!」 「かっ…奏さんッッ!!危ない!!」 俺の忠告を無視して赤い髪が揺れ動く、どんどん加速していきそれは一筋の閃光になっていく。このままでは…と思った時にはもう遅くて、閃光は奏さんを貫く。 「こいつがお前の大事な奴らの一人か?ハッ!!脆いな」 ...
飲食街ヴィリチャー
飲食街ができたのはいつだかはわからない、数日前だった。ただの飲食街だと思っていた。その安易な思い込みが、僕らを死の淵に立たせたのだった。 「腹減った~…何か食うもんないの?」 「もうないよ、ていうか…遺体が転がっているこんな場所でお腹が空いたなんてよく言えるね…」 ...
廃墟の民
長い、長い道を歩いた。 自分でも驚くくらいの道。 何故、俺はこんなところにいる… 目が覚めた時に、俺は何か訳の分からない場所にいた。はっきり言うと、前後の記憶が曖昧だった。その忘却力が激しくなったのは単なる年のせいだと言い訳していたが、どうやら自分の身体を酷使してき...
スズラン
目を覚まして まず上半身を起こしてみた 私の目の前には綺麗に仰向けで眠っている我が主 顔は見えない、けどその赤い浴衣は間違いなく貴方のものでしょう 視界が辺りに慣れてきたのか、周りには青々とした鈴蘭が所狭しと生えていた ...
左右の心得(仮題)
「おはようございます、瑠璃さん」 午前6時、少々皆が起きるには早い時間帯に大鳥奏と鈴宮瑠璃は庭でばったり出会った。 「…ああ、おはよう」 「また先程お帰りになられたのですか」 「…まあな」 そういう瑠璃の目は奏から逸らしてしまった。空気は冷えて静かに漂っていた。...
侵入
彼らの眼前には仁王立ちで黒服を着た今回の主犯格らがいた。突然の出現により斎たちの動きが止まっていた。そこへ、ある男が彼らとの間に入ってきた。ギルバートは男にニヤリと微笑を浮かべ、それから男は斎のほうへ振り返った。 曽刹は次のように言った。 ...
暗黙の掟(仮題)
どうして僕がまた、こんな危ない目に遭うんだ。 僕が何か、神に背くような真似をしたのだろうか。 日本時間 A.M.5:00 僕は昨日の手紙の憂鬱さから布団から出たくはなかった。 「(早くしないと飛行機に乗り遅れてしまう)」 こんなことなんて考えたくないんだけど、ね…。...